普通の商店街とひと味違うのは、空間の「密度」である。密度といっても、店揃いが豊富でただ賑わっているというだけではない。商品が空間に美しくディスプレーされ、客の目線がハッと釘づけになる。自然に店の奥へと引き込まれていく。客と商品との出会いは、いわばひと目惚れの関係となり、買ってくれと言う前に売れる。もちろん対面販売の安心感が、無形の商品力となっているわけだが、どの店も商品陳列のかたちには洗練があり、京都錦市場を連想する美学が見て取れる。街並みには売り手と買い手で創った独特の文化が流れ、その風景には歴史を刻むかどや食堂の姿が佇む。いまさら「スローフード」と言うまでもなく、このまちでは献立選びに頭を悩ませることもなかろうと、想像してしまう。