博多座開業の平成11年に始まった博多川の「船乗り込み」も、今や博多の初夏を彩る風物詩となりつつある。江戸時代に大阪で歌舞伎興行の際、ご当地到着を船でお披露目したことに始まり、現在では大阪と博多だけの珍しい行事である。
博多川を清流公園から博多リバレインまで、笛や太鼓のお囃子を先頭に、紋付き袴姿の役者たちを乗せた船が色とりどりの幟をなびかせて下ってゆく様は大変風情あるもの。両岸を埋めた人垣からは、「成田屋!」「音羽屋!」など贔屓の屋号や声援がかけられ熱気を帯びる。「船乗り込み」は、博多川が整備され美しく蘇ったから可能になった催しでもある。「船乗り込み」は博多川一帯を舞台として、役者と観客と景観とで作り上げる、一幕の芝居と言えよう。