鉄道や公共施設など、公共性の強いものには、機能性に優れ、効率的で、だれにでも好かれる当たり障りのないデザインが施されるのが常だ。JR 九州の列車デザインは、こうした“常識”をポジティブに覆した。大胆な造形や色彩、従来にないコンセプトの車両は、明確なアイデンティティを表現し、その姿は地域の顔となった。JR 九州の列車デザインの魅力は、鉄道ファンやデザインの専門家に限らず、全国的に広く認められ、独自の地位を築いた。こうしたJR 九州の取り組みは、787 系「つばめ」が投入された平成4 年から続いている。長期的な視点に立った継続的な活動により、プロダクトやサービスのデザインにとどまらず、いまや福岡の景観デザインとして定着した。