「海に開かれたアジアの拠点都市」として、福岡市は海、とりわけ博多湾の存在を強く意識したまちづくりを目指している。しかし残念ながら、博多湾の持つ優れた環境特性を十分に生かした建物や諸々の環境的資産は、現状では決して多くはない。
その意味で、このホテル海ノ中道は、国営公園内であるという恵まれた立地条件をふまえながら、景観的にも博多湾との積極的な関係付けを強調しており、福岡市のウォーターフロントにおける景観形成の一つの方向性を打ち出している貴重な建物であるといえる。海に向かって開かれたこのホテルは、人々に素晴らしい眺望を提供し、博多湾の持つ価値を多面的に発見する契機を与えてくれるであろうし、一方で、海から見られる景観がいかに重要な意味を持つかを、市民に強く印象づけた点でも高い評価が得られるべきものである。