街は、都市へと変貌するにつれて、物語や歴史を失って無表情になっていく。見慣れた街角にも、新しい建物が突然あらわれると、「この場所」に何があったか思い出せないことがよくある。
シーサイドももちという新しい街は、もともとない「この場所」に、人間が「この場所」と物語を創っていこうとしている街だ。海と太陽、入り江、浜、磯と続くポケットパークは、この新しい街に、「海」というこの街の歴史の表情をもった街角物語を創りだしている。しかも文字でない、蟹、かもめ、うみがめというモニュメントのユーモアが楽しい。
街の物語や歴史を、道路脇の文字版一枚で説明するという無粋なことは、そろそろ止めにしたらいかがだろうか。都市という無機質なきれいさの中で、私たちは「この場所」という愛着をこめた街角物語、心の中の都市景観を失いつつあるのだから。