閑静な住宅街に立地するレストランである。もともと地盤のやや高い敷地だったのを利用して、内側で地面を堀り込み、建物を沈めてその姿を見えなくしている。道からは石垣に食い込んだ一間半の白い妻壁が見えるだけだ。そして、このファサードからは想像できない客席空間が奥に広がっていて、来訪者を楽しませてくれる。工事の際に除去された石垣が復元され、敷地内の木々も可能な限りそのまま残されたことで、かつて邸宅だった時代の面影が景観として受け継がれている。建物をあまり主張させずに、存在を潜ませることによって地域環境に寄与する、そういう建築のあり方を示す好例である。