後ろの山の緑を借景に、閑静な住宅街に立つ「茶山の家」は、新たに立て直された住宅にもかかわらず、すでにしっくりと周りの景色になじみ、あたかも以前からそこにあったような、落ち着いた存在感を漂わせている。土塗り風の壁は左官の技を伝え、銅板葺きの大きなひさしは、急な雨や夏の日射しをいっとき避ける見知らぬ客人にも優しいにちがいない。伝統的な日本家屋のよさを生かしながらも、曲面で広がる壁、曇りガラスをはめ込んだ格子、色むらの美しい茶系のタイル、そして2階前面を覆うベージュの砂岩の大きな割石がモダンなアクセントを与え、上質の建築のひとつの形を示している。時代を経てさらにどのように熟成していくのか、楽しみな一軒が建てられた。