32年間の歴史に幕をおろしたイムズ。この広告は、単なる商業施設を超えた文化の発信基地として天神の町に放った最後のメッセージである。福岡の建物などを擬人化した作品で知られる劇団「ギンギラ太陽's」を起用し、周辺の商業施設ひとつひとつ(一人ひとり?)に向かって一言ずつ語りかけるという意表をつく手法は、懸垂幕という現代では珍しくなったフォーマットの新たな可能性をも引き出した。本来、広告とは自らの商品やサービスを宣伝する役割を担うものだが、この広告は、逆に町や他者にエールを送ったという点でも画期的だった。競合ではなく共存するという、他の都市にはない福岡ならではの町のあり方を見事に可視化した広告だ。イムズを通して文化の面白さや深みに導かれたという思い出を語る人は多い。「イムズはおわる。イズムはつづく。」というコピーが象徴するように、懸垂幕に1行ずつ書かれた言葉は、イムズという建物が消えても、人それぞれのイムズへの想いとともに思い起こされる永遠の「イズム」となるだろう。イムズのファサードを長年飾ってきた懸垂幕に浮かび上がったユーモアあふれるセンテンスは、町や人々に対する愛情に満ちたフィナーレとなった。