ミュージアム・シティ・プロジェクトは1989年に始まっている。福岡市の中で都市化の密度の最も高い天神を舞台にして、現代美術を展示・展開し、作品が置かれることによって新しい情況を産み出そうという前例のない試みである。作品の展示だけではなく、パフォーマンス、セミナー、公開制作、見学会などが企画されるので、作家と市民が直接出会う劇的なシーンが見られる。また、1992年のナイジェル・ロルフの巨大な作品はその背景となった古いレンガの洋館建築と見事なコントラスト、夜は屋台と共鳴して独特の都市景観を創出したのは印象的であった。このような情景は市役所前広場の江上計太の作品をはじめ、全ての作品がその場所と関わって強烈な香りを漂わせ、福岡市ならではの空気を創り出している。高く評価したい。