市民が親しみを持つ博多湾岸の主な景観は、能古島の緑、ビル街のシルエット、クレーンが立ち並ぶ港湾施設であろう。船舶荷役の取扱量が漸増している博多港で今年5月、香椎浜に新しいクレーンが出現した。クレーンや鉄塔など大型構造物は赤白の塗分けで航空障害物である表示を行う。本件では、弓状で見通しがきく湾岸景観に配慮し、赤白面積比を大きく変えた色彩計画が高く評価された。クレーンは主色の白に機構ごとのさし色を加え、巨大なタンチョウヅルにも見える。市民生活を陰で支える仕事場のトータルデザインである。そこで働く人にも海の風景を愛する人にも心地よく親しみやすい色彩は、博多湾の魅力をさらに引き立ててくれるに違いない。