スーパーインポーズという映画で使われる手法がある。前の画面を少しずつ消していきながら次の画面に遷り変る。時間の記憶がすり替わる瞬間だ。この手法が都市景観でも同じように使えることを、西陵公民館は見事に示してくれた。昭和56年以来の改築として計画されたが、よく見る継ぎ接ぎの増床とは異質である。建築と広場の空間に新旧の軸線が斜めに交差する。ガラスで覆い囲まれた新しい空間は、旧きよき風景の痕跡と重なり合いながらスーパーインポーズする。建築内部と外部環境は見事に融和し、広場をうねる空気の流れが屋根を見上げる風景となって地域に溶け込んでいる。旧い風景の記憶に、子ども達の幸せな奇声がこだましているようだった。