糸島半島の豊かな自然環境と溶け込むかのように九州大学伊都キャンパスは存在する。急勾配の地形を活かし、個性的で重厚な建物が建ち並ぶ。何より開放的な空間に圧倒される。その構図はまるで社会に門戸を広げたいと願う大学の意志を示しているかのように思える。実際に学内研究者と市民が連携して里山などを整備し、敷地内で発見された希少種の保存に取り組んでいる。伊都キャンパスの開発は今後も続く。今回の受賞はいわば未完の景観に贈られたものである。キャンパス周辺は、「魏志倭人伝」に出てくる「伊都国」の歴史の舞台でもあっただけに、新たな都市空間を地域と一体となって築き、社会と共生する学術研究都市が整備されることを期待したい。