昭和８年に架橋されて以来６０年もの歳月、福岡のまちと人々の生活を見守り支え続けた来た名島橋。この名島橋は建設された当時の資料を読んでみると、「地元の人々・設計者・工事主任・大工さん・石屋さん・作業員の皆さんが一丸となって建設された」と書かれていた。そして平成６年の復元は、多くの市民より寄せられた架橋当時の写真や貴重な資料・化粧直しのアイデアをもとになされたという。この名島橋の建設及び復元には権力者や設計者のおごりは存在せず、橋と地元の人々との情熱を傾けた非常によい関係を感じる。この関わりが６０年もの時間の流れの中で自然環境・周辺景観との調和を崩すことなく永らえてきたのであろう。このたびの復元も橋づくりと復元技術つまり文明と、その文明に命を吹き込む文化がうまく重なり合ったものになった事象だと言えるのではないだろうか。
良好な都市景観の形成とは、この橋にまつわる諸様相の様に地域住民の熱意が時間を超えた不変の美しさを保つのであるとのことを実証した好例の一つ
である。
