建築作品として話題の小学校だが、「都市景観」としても注目に値する。ここでは、塀に囲まれた従来の学校像が払拭され、抜けの良い空間構成によって開放的な表情がつくり出されている。学校の中からは大博通りをガラス越しに見ることが出来る。子供たちは日常的に都市を感じることになるだろう。では、この建物が街に見せているものは何か。道行く人が目にするのは建物のファサードではない。子供たちの学校での日常的な活動である。最近では、街角で子供の遊ぶ姿を見かけなくなった。子供の居場所は学校や塾や住宅の中に囲い込まれてしまっている。それを取り戻すのはもはや容易ではないだろう。とすれば、擬似的にでもそれを都市空間に滲み出させる、博多小学校のガラスにはそういうことが期待されているのかもしれない。