中州の突端近く、博多川に面して、和風の建築が静かにまたずっしりとたたずむ。昭和22年の建造というから既に多くの改修を経たことであろうし、また周辺の土地利用や環境の変化も著しいものがあるに違いない。料亭の性格から、「招く」と「拒む」という両面が、空間的に表現されている必要があろうが、それが、川という博多にとっての大事な景観要素との関係、また見事な塀の連続によって果たされている。建物の外観がモルタルになっていることは惜しまれるが、東南側の街路を隔てた無機質なパーキング施設は、一見その存在さえも分からぬほどのマキの生垣で隠され、街区単位での景観形成へのたゆみない努力が伺われることが評価される。