今回、実施要領が一部改訂され、文化財指定を受けたものも対象に加えられるようになった。それに伴っての受賞である。建設当初の写真を見ると、西中島橋のたもとの角地にあって、一際大きな建物だったことがわかる。一見複雑な平面計画も、ドームの載った塔も、街角をデザインすることが意識されてのことだ。それが現在は、拡幅された道路と高いビルに囲まれたむしろ愛らしい建物となっている。そして、福岡という都市の「記憶」としてあの場所になくてはならないものだ。それは単に古いということではなく、世代を超えて市民に認知され続けてきたことによる。福岡の街がどんどん変わっていく。福岡市文学館は、その移り変わりを示すインジケーターのような存在だ。それは同時に、人々のための都市空間を担うことをもはや忘れたかのような昨今の建築への警鐘でもある。