アメリカの建築家エミリオ・アンバーツの「庭園は始まりの神話である」というコンセプトによるアクロス福岡が完成して、すでに4年の時が流れようとしている。北側と南側にまったく異なったファサード(建築物の表面)を見せるこの建築物の最大の特徴は、南側前面をダイナミックに傾斜させ、段々畑のような階段をつけて緑化し、建築とランドスケープ(造園)の劇的な融合を実現させているばかりでなく、隣接する天神中央公園とも利便性と景観性を連動させている点にある。ステップガーデンと呼ばれるこのランドスケープの大胆な導入は、都心部に自然をふんだんに取り入れるオープンスペースのあり方に新しい方向性を示すものとして高く評価される。通常、建築物は、完成時が最も新鮮で輝いて見えるのに対し、緑は新しい環境になじむまではむしろ弱々しく頼りなく見える。アクロス福岡のステップガーデンは、完成してから現在までに幾度かの四季を過ごし、順調な成育を見せ、四季折々に変化する景観を市民に提供しつづけ、その頂上から海が見える都市の岡として福岡市のシンボル的な都市景観にふさわしいものになってきたという観察と確認を経て、今回の受賞となった。