南公園の北西に位置し、動物園・植物園を経由するバスの通りに面した日本料理のお店である。通りからの眺めは30年以上の時を経て、森の緑にほどよく溶け込んだ印象を与える。建物の造りはひかえめで、森との調和をはじめから意図していたことが分かる。門の暖簾をくぐるとすぐに緑陰に包まれて、バス通りに面していることを忘れる。そこから斜面の上の玄関へと導く階段は側壁に巨石を配し、基盤となる切石の石段とところどころに木製の段を取り入れる組み合わせが心地よい。鳥のさえずりも聞こえる。地形と植生と素材を活かした伝統的な日本の空間形成が、サステイナブル(持続可能)なデザインのモデルだということを、分かりやすく示す風景だ。