“壁面には言葉がある”ジョーキュウの建物を見てそう思った。施主である松村さんは木を使いたかったそうであるが、建築基準法の制約で断念し、タイルに踏み切った。有田・岩尾で気に入るまで試作した特注のタイル。何といっても色彩と肌合いが素敵だ。新しい建物に対する思い入れが路地の正面、微妙に屈折した角地、前に古本屋さん、提灯屋さんのある巷の中のランドマークとして結晶している。景観の妙といえよう。天井の高い店舗の奥に庭があって二棟のしらかべ、土蔵が見える。古い井戸もある。町家の味わいと格調を決定する奥行きが生かされている。
赤レンガの八角形の煙突が見える。高さ18m、基底の直径1.8mのしっかりした煙突は、今も工場の中心にあって稼動し、機能的にも景観的にもジョーキュウの大黒柱である。棟の鬼瓦と共に伝統が香る。