地下鉄赤坂駅から地上に出ると、ビルの谷間の明治通りにはいつも車と人が溢れている。その喧噪をぬけ天神方面に歩く時、いつもふっと引き込まれそうになる空間がある。この教会の前庭である。きれいに刈り込まれた生け垣と手焼きのタイルの塀、そして奥に建つ簡素で清潔な印象の教会堂建築に囲まれたこの空間。ちょうど童話「ちいさいおうち」のように、時の流れのなかで取り残されたものだと誰もが思う。ところが決して古い建物ではない。もとは天神にあった教会が 1943年、大名に移転し、現在の建物は同じ場所にわずか13年前に新築されたものである。経済効率を追い求め、空間を埋め尽くすことのみに血道を上げてきた我々に、「まちに家(建物)を建てる」ということの意味を改めて考えさせてくれる景観である。