キキプレイスは、天神の西側繁華街に隣接し、土地利用の変化が激しい大名 地区にある。そのような環境の中で、伝統的な街区の形態を守り、視覚的に 間口を分節するなど、居心地よい狭さを持つ裏通りのスケール感を維持した ことがまず評価される点である。また、中に収められた託児施設や美容室な どが、繁華街に隣接した住宅地での様々な生活様式を支える小さな核として 機能するであろうことを予感させる。
テクスチュア(素材感)を重視した壁面、通りとの視線が透過する窓などの 開口部、シンプルな手すりの付いた2階への階段など、建築の外観そのもの は小さな工夫の積み重ねに過ぎず、いくつかの欠点も否定できない。しかし、 我々は、その無難だが誠実な姿に対して、人が住む空間の景としての基本的 な「文法」を押さえたひとつのパターンを認めることができるのである。