都市景観の善し悪しを論ずるには様々な視点がある。建築は都市景観に大きな影響を与えるが、その評価は慎重でなければならない。良好な景観形成との関係からいえば、いかにも奇抜で、自己主張の強い建築の横暴ぶりに疑問を抱く人も少なくない。しかし、一方で、すぐれた建築の存在が周辺の環境の質を確実に高めることがあることも、決して軽視されてはなるまい。そのことを明快に示しているのがこの建物である。
大学のキャンパスの一角に立地するこの建物は、周辺に快い緊張感と落ち着いた心地よさを醸し出している。魅力ある景観形成のための建築デザインの在り方を静かに語りかけてくれる。都市景観を考える上での市民共有の生きた「教材」になるためにも、この施設が広く開放され、一般市民にもなじみのある建物になってほしいと願うものである。