箱崎本通りの商店がにぎわう界隈に、明治初期の木造土蔵づくりの町屋が落ち着いた佇まいを見せている。通りに面して右手の部分が新しい漆喰壁で作られた家屋であるが、左手の古い家屋と板塀を隔て屋根勾配なども同じプロポーションで構成され、壁は白色で統一されているため時代の隔たりを感じさせない。ヨーロッパの古い町並みが町全体の色調をトーンイントーンという手法で整えられているため、近代までに作られた建物に何百年という時間差があるにも関わらず、素人見には区別がつかないようになっているのと考え方はまったく同じである。時代を超え、良き物を継承するのにも工夫と勇気がいる。新しさばかりが創造性ではないことを教えてくれた。