歴史的建築物としては、確かに年代的には1928~30(昭和3~5)年という、近代建築史上の大きな転換期に建てられたものであり、西欧におけるデザイン思潮の影響という点でも注目に値する点が多い。一方、都市的な観点からは、帝国大学ひいては官学アカデミズムそのものの威容を、都市自身の威容と見立てる役割を果たしてきたのであろう。都市や場所の歴史と記憶をたぐる「よすが」が福岡にはもはや数少ないという現実がある。そのことを裏返せば、大学移転という事態のさなかにあって、今後のおのれの存亡の問題を、都市の歴史や文化のこととして、むしろ都市自身に投げかけ問いかけている貴重な存在なのである。