都心の幼稚園・保育園の未来形はこうなるか、とそのあり方を考えさせられる。完成形がそこにあるのではなく、あらかじめ今後数十年にわたる時間の経過が計算に入れられている。通りに面した外観は無機質なアルミ、園舎のドアや床など人間のからだが触れる部分には、あえて天然無垢の木材が使用されている。陽光を浴びる子どもたちは、素足で内と外の区別なしに走り回る。樋井川から時折訪れる川蟹とたわむれ、庭先に現れる蝉の脱皮に目を凝らす。都会に育つ子どもたちには、このような凝縮した空間と時間が必要なのだ。グレーの金属、ずっしりした肌色の木目、ベージュの砂には、路地の赤いサルビアがよく似合う。使い込むことで完成する、未完の美がそこに見えてくる。