10年近い歳月が、この建物を大濠公園の南縁の一角にしっかり鎮座させ、新たな美術館のある風景をつくり出した。特別目新しいデザインでもなく、どちらかと言えば地味でオーソドックな様式だが、この自己主張をしない端正な姿が文化財的な大濠公園によくマッチし、景観向上に寄与している。美術館横の公園広場が若者たちのパフォーマンスの会場になっているのも、新しい風景のせいだろう。周囲をリードする美もあれば、調和する美もある。これはまさに後者であり、ここには自己主張の強い建物は不必要であろう。素晴らしい眺めを提供している落ち着いた雰囲気のある二階テラスや美術館周辺の広場の風情が高く評価され、賞の決定にあたって、高い点が入っていたことを付記する。