梅雨明け間近から夏にかけての早朝に、蓮は音を立てて咲くと言う。舞鶴公園の濠では、ピーク時には600もの花が咲き揃うと言うから、つぎつぎと音を立てて開花する様は天上の鼓のようなことであろうか。その瞬間を見聞きできなくても、濠一面、緑の蓮の葉に被われた景色は、初夏の風物詩としてすがすがしい。何より、濠の手前に余計な柵などないのがいい。後ろの土手までずっと自然がつながって視界を切断しないから、空間に広がりを与え、気持ちにゆとりと安らぎを与える。蓮の季節の前には、花菖蒲、睡蓮と花が替わり、時の移ろいを見せてくれるのも都会にあってはうれしいことだ。見えない努力がこの景観を支えているのであろう。これからも市民の目や耳を楽しませて欲しいものである。