長年市民の憩いの場として親しまれている大濠公園の南側にできた新しい休憩施設である。お茶をテーマとした和カフェを中心とする木造2階建ての建物は、その存在を主張することなく、公園に面して静かに建っている。大きなガラス窓を通して、美しく光が当たる大濠の景観を屋内のどこからでも一望することができ、特に季候の良い時期には、すべての建具が大きく解放されて、屋内外が一体化する。テイクアウト前の待ち合わせ場所、日本庭園の入り口、2階のテラスといった屋外空間も建物とともにデザインされて、完全に公園の一部として機能している。
一見すると切妻という伝統的な木造建築のイメージを守っているために、一般的な建築だと思うかもしれない。しかし、奥行きのない細長い敷地の中で、公園側には一切壁を作らずに完全に解放し、屋内空間も開放的に作るのは容易ではない。厚さ60mmの薄いCLTを用いた小スパンのラーメン構造という現代的な材料と構法によってその課題を乗り越え、さらに建物の高さを最小限に抑えて、ヒューマンスケールを守ることにも成功している。家具などのデザインにも、様々な木材を使った工夫が凝らされていて、施設全体に統一感あるイメージを与えている。
これまで通り過ぎるだけだった大濠公園の南側に光を当て、日本庭園のエリアを新しい和風のイメージで再構成することによって、新たな公園の魅力を発掘したといえる。