賞の対象となった物件は、遠目にも目立つように、激しく他と競いがちな建物や看板類が横行する市街地の中で、建築ラインを少しセットバックさせていることや、「夢のスマロ(四馬路)の霧降る中で」、ぼかし絵のように浮かびあがる、押さえ気味の壁面広告は、茶席で庭の全ての花を摘み取り、ただ1輪のみ床の間に飾ったわびの世界にも通じる手法である。まちなか街中のランドマークは視覚的にアッと驚く単なる目印や目標物ではなく、街行く多くの人々にとって、心の片隅に残る存在であれば十分であり、対象は十分都市景観賞に値する。尚、地表の大部分が舗装されヒートアイランド現象に悩む天神地区では願うべくもないが対象が霧の中の光の軸に浮かぶ光景を見たい衝動に駆られる。