「博多町家」ふるさと館は、その長いネーミングと同様に、明治、大正期三棟の町家が、長く連なったファサードを持つ建物である。実際は、展示棟と復元町家とみやげ処の三棟から構成されているのだが、屋根に段差をつけたり、間口を2.5~3間区切ることで、通りに面して、あたかも5軒の町家が並んでいるように見せたり、復元町家と展示棟の間に路地を設けて、空間や動線の変化と広がりの演出が快い、見事な仕事である。そのネーミングが示す通り、ここにくると古き良き時代の博多の景観、そこでの暮らしぶりや人々の暮らしを支えた町家やふるさとの情景がイメージできる。急速に近代化、都市化が進む中で、こういう文化や歴史の香りのする都市景観が、もっとあっていい。前面道路との境の段差や車止めが、やや気にはなるが、ストレスの多い都市生活の中で、ホッと一息つける昔なつかしい、都市の景観である。