私たちの生活から、長屋文化の伝統が消えてしまったのはいつ頃からだろう。考えてみれば惜しいことをしたものである。ともに住まう工夫こそ、今都市の景観を創る原動力になるはずなのに。
都市の集合住宅にとって一番の難問は、共有部分に住人がどのくらい共感を持ち続けるかではないかと思う。プライバシーという名の孤独を好みがちな都会で、共通の街路や緑地は隣人との共感がなければ維持できない。シーサイドももちアクアコートは、集合住宅のこの難問に、豊かな緑と景観を用意することで共感をつくることに成功している。また設計に際し、福岡市の公園緑地と上手な共同歩調をとっているというのは、失礼ながら行政もたまには味なことをするものだ。
共に住まう知恵として、住人がその維持に共感を持てる景観を準備するというのは、すてきなアイデアだと思う。