“もし、西日本渡辺ビルにあの色彩が施されなかったら、建物も界隈も随分ととり澄ましたものになったであろう。”・・・私は当時の論争を思い出しながら、今でもそう思っている。
大規模建造物の色彩や材質はその周辺の景観を決定的にする。この建物は企業のC・Iを表現した大胆な色合いだけに、挑戦的な気合いが読みとれるような気がする。
また界隈への配慮もあって、この建物の色彩決定のために、発注者と設計者はわざわざニューヨーク、ワシントンの街へ出かけて検討を重ね、緑の木々に映え、しかも飛行機で福岡の街に降下するとき、能古島あたりからも鮮明に見えるライトレッドに決定した。ベルギーで特製された外装材も焼付発色に納得のゆくまで設計者が現場に泊り込みで立ち合ったと聞く。
建物の色彩は設計の生命を表現し、色彩が界隈に生命を吹き込む。西日本渡辺ビルの色彩にかけた心意気を評価する。警固公園からの夕日に映えた時の景は見事である。