賞の対象は、香椎宮参道約800mの両側の歩道、いわゆる勅使道に植栽さ れたクスノキの並木を主体とした街路空間である。往年は落葉樹が主体であ った街路樹に常緑のクスノキを採用したことには興味をそそられる。新芽時 の紅葉、初夏の淡緑色、盛夏時の鮮やかな緑は日光を遮る緑陰を提供する常 緑でありながら十分季節感を感じさせる。根本の周囲(芝付き周)は1.5 m~3.5m、高さ8m~15mと生育は不均等であるが、それが却って規 格化された街路樹のイメージを和らげて古色蒼然とした森の風情を感じさせ る樹木である。根茎保護のための植桝の改良が行われており、適宜管理が行 われているようであるが、今後、大木については若干の抑制管理が必要にな るかもしれない。対象空間は、今までも他の賞の候補に何度となく挙がって いた記憶が筆者にはある。それだけ多くの人々に愛されている空間なのであ ろう。