角を曲がると一瞬、審査委員が感嘆の声をあげた、そこは紅葉のトンネルであった。今年の紅葉の訪れは例年になく早く、美しいと言う評判であったが、中でも対象地は一際見事な色彩であった。櫻の紅葉は、イチョウの黄葉の様にその色合いが一様でなく一本一本、一枚一枚違う、そのことが華やかさの中にも微妙な風情を感じさせるのである。色合いのみならず、樹木のスケールも人々の歩行にちょうどよい大きさであり、樹齢と大きさを考えるとこれ以上にむやみに大きくなることもないと思われる。特有のテングス病の発生も見られず、さぞかし花も新緑もすばらしいものであろうと想像する。しかし、紅葉が美しいのは背景に緑があるからであり、今後この地の潜在自然植生群に含まれる樹木を基調とした樹林地を骨格として並木両サイドの修景を心がけると、より一層すばらしいものとなろう。推薦者の気持ちに同感する景観であった。