本キャンパス開発のシンボルである旧西南学院高等学校講堂は、九州大学事務局第一庁舎、福岡高校と並んで、福岡近代化の歴史を教育施設の側面から未来に伝える貴重な遺産であり、いずれも景観賞を受賞している。本プロジェクトは、まず、この貴重な近代化遺産の価値を際立たせ発展させる新たな建物群の空間配置と建築意匠に優れる。そしてさらには、西新の賑わう商店街や閑静な住宅地のもつ「旧い福岡」と現代建築に彩られた百道浜の「新しい福岡」とをつなぐ回廊の役割を担う点において、地域に優れた景観を創出していると言える。都市開発の中で免罪符的に孤立して保存される近代化遺産建築が多いなか、大切にしたい都市の記憶をいかに新たな環境として未来に手渡すべきかについて再考させられる開発でもある。