賑やかな西新の大通りから北に折れた静かな低層の住宅地を抜ける道の正面にこの講堂は建つ。80年の風食にもまだその色が暖かな赤煉瓦と瑞々しい緑をたたえたツタが絡まる壁の前に立ち、これまでどれだけの生徒や大人たちがこの壁面を見上げて異国への憧れを抱いたことかと思いをはせる。大正期を挟んで日本で活躍した建築家W・Mヴォーリズの煉瓦造り建築の代表作とされるこの建築物には、2階に現役で使われている講堂があり、上層のギャラリーとホールを埋め尽くす生徒たちの賛美歌が、建物中に響き渡る。今は屋根が傷み内部の改造も進んでいるが、今後は高校敷地の移転に伴い、西南大学のシンボルとして修復保存されると聞いた。この講堂が安らげる環境が維持されていくことを切に望むものである。