古い公団住宅の外壁のタイルを剥がし、むき出しになった表面にノミの痕跡を荒々しく残すファサードと、そこにポツンと置かれた「D&DEPARTMET FUKUOKA」のロゴには、人の注意をひきつけずにはおかない存在感がある。広告主が媒体を使ってメッセージを公に発信するものを広告と定義するならば、媒体は建物のファサードであり、その素材や状態、ロゴを含めたブランディングによって広告主の「ロングライフ」というコンセプトを力強く伝える新しいな屋外広告のあり方を提示している。すでにある物に何もつけ加えることなく、むしろ取り除くという手法、極限まで要素を切り詰めるミニマルな表現によって、景観と調和しつつも、それまでの環境を読替え、時代にあった新しいメッセージを認知させる広告として見事に機能している。