凄いものが出来てしまった、というのがイル・パラッツオを初めて見た時に抱いた感想である。それは、福岡の街の中では明らかに異質の存在だったが、異様ではない。それどころか春吉という立地がよく計算されている。神社の鳥居を思わせるフォルムとカラーリングのせいかもしれないが、どこか東洋的で有機的である。イル・パラッツオが現れてから、人の流れが変わった。恐らく、それまではほとんど春吉に足を踏み入れたことがなかったであろう若い世代が、この町に興味と好感を持ち始めたのだ。ともすれば沈みがちだった町に新鮮な指針を感じさせる景観をつくりだしたという意味で、イル・パラッツオの存在は大きい。町に対する美意識の勝利と言えるだろう。