博多・住吉にある楽水園が、福岡都市景観賞のまちなみ空間部門を受賞することになった理由は主に2点ある。まず、茶室と茶庭という場、もしくは空間の性格からして、内に向かう空間と景観構成であるにも関わらず、外周にバナーキュラーデザインとしての博多塀を大胆に使い、この地域のまちなみ景観に大きく寄与している点。次に、メインエントランス部分のポケットスペースが利用者をして外界からスムーズに内界へと誘導し、また、逆に内界としての茶庭自体があたかも外界に向かって触手を伸ばしているかのごとく広がりをみせている点にある。アプローチの素材の統一感と“茶”というものを共通用語とした建築とランドスケープの一体感もいい。回廊できる池泉をめぐり、つくばいで手を清め、お茶
を味わう。
ここは、繁雑な都市の生活の中で、茶道と日本の文化の趣を体感できる、文字通り、水を楽しむ園なのであろう。