向こう三軒両隣という言葉があるが、優れた街並みはまさにこれらの集積で ある。風土や掟に縛られながら、個性を抑えた規制や統一感の中に、それぞ れの意匠に工夫を凝らした調和が保たれている事が魅力を感じるのである。 そういう意味で、株式会社サンコーの本社社屋は素材や形状が独創的で、社 業をイメージしながらも、個性と公共の両立が図られており建築の自己主張 から来る閉鎖性を感じない。先述の街並みの視点を重視し歩道との空間的、 視覚的連続性は日本建築の軒下を暗示し、近隣の人々の談笑の場としての縁 側の思想を垣間見ることが出来る。歩道沿いの隙間のある煉瓦塀と、造形的 にも素材的にも無難な処理ではあるが、れんがの赤とよく対比した緑であり、 向こう三軒両隣へと将来の展開を暗示させ、十分都市景観に貢献していると 評するに足る社屋である。